職人さん

住宅というものは、基礎屋さんから始まって、足場屋さん、大工さん、レッカー屋さん、水道屋さん、水道屋さんなどなど、本当にたくさんの職人さんの手によって造られます。
私のような着工前の仕事をさせていただいている者からして、職人さんは大変たよりになる方々で感謝しかありません。

一方で時代の移り変わりなどの理由で消えゆく職人さんもいらっしゃいます。
茅葺職人さんや元皮師さんなどが代表でしょうか。
そんな消えゆく職人の一つ、木挽き職人さんを、ずっと昔に訪ねたことがあります。

木挽き職人

職人さんのお名前は林以一さん。
江戸木挽き職人最後の一人と呼ばれていました。
木挽きというのは、丸太を製材する(板や柱などに切り分ける)職業。
大きなノコギリで木を切っていく様子は浮世絵などにも描かれています。

近年では、バンドソーなる機械で製材するのでお世話になることもほぼありません。
一方で価値の高い銘木や機械に入らないような大径木などは、木挽き職人さんの手にゆだねられます。
手ノコで製材すると機械に比べて、おが屑になってしまう量が少なく済み、より多くの木材を切り出すことができるそうです。

職人の勘

木挽きの腕の見せ所といえば、当然切り取りだした材料の仕上がり。
製材した際にノコギリで切断した面に良い杢目が出れば価値は上がりますし、虫食い跡や節が出てしまったら価値が下がります。
なので、切断するまえにどこに刃を入れるのか、目利きすることが大切です。
この作業を木取りといいますが、時には1週間ほど丸太を前に考えるのだそうです。

『何をみているのですか?』と林さんに聞いたところ木肌の具合や年輪の入り方とのこと。
実際に気になっているところを指で示してもらっても、ほんの少し木肌が盛り上がっている程度で指を外すと見失う程度のもの。
いわく、この場所を切ると節が出るのだとか。

また、ノコギリで切っているときにも職人技があります。
木も場所によって硬さが異なります。
そのためノコギリで切っていくとどうしても柔らかい方に刃が進んでしまい、そのままだと断面が曲がってしまいます。
そこで、ノコギリの目立てをします。 目立てとはノコギリの刃を研いだりして調整する事。

ノコギリは板状(身といいます)の本体から左右交互に刃が出っ張っています。
ノコギリの右側に曲がりそうになったなって思ったら、左側の刃がよりよく切れるよう刃を研いだり、角度を変えたりします。
そうして左右の刃のバランスを調整するとまっすぐ切れるようになるそうです。
目立てをするのは、刃が曲がって進んでからではもはや手遅れ。
『どうやって曲がりそうになるのを見極めるのか?』と伺ってみたら、手から伝わる感触なのだとか。
もはや素人にはさっぱり、、、
言葉で伝えることのできないノウハウこそが職人たらせるものなのかなと思いました。

そんなお仕事なので、木を切っている時間よりも木とにらめっこしたり、ノコギリの目立てをしている時間の方が長いのだとか。
『ハタから見ていたら、アイツ仕事してねぇなって思われているかもね』と笑顔で林さん。
最後に握手をしていただくと、柔らかい手。
ノコギリを引いていると、さぞかし手を酷使しているだろうと思っていたので、とても意外です。
案外、そういうところに職人技の真髄があるのかもしれませんね。

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