気密ってなに?

毎度、マニアックな情報をお届けするこのコーナー。
今回のテーマは『気密』です。

webなどを見ていると、実は住宅のプロの中でも気密について賛否両論あります。
つまり高気密賛成派と反対派の両方の情報が入り乱れていて、一般ユーザーの方には真偽が判断付きにくい状態と思います。
という事で、気密についての疑問に低燃費住宅がズバリお答えしちゃおうと思います!

換気ってなに?

さて、『気密』について触れる前に『換気』について確認しましょう。
換気の目的とは
・汚染物質の排出
・湿度の排出
・臭いの排出
・新鮮な空気の供給
です。

湿度や臭いを排出しなくてはならないことは、すぐに想像できるかと思います。
そして排出(排気)すると同時に、何らかの形で外気が入ってくる(吸気)ことも理解できると思います。
なので一般の方から見てちょっと分かりづらいのは、汚染物質だと思いますのでこの部分に少し触れておきます。

住宅の空気の汚染物質と言われてすぐ思いつくのは、シックハウス症候群の原因となる揮発性有機化合物ですね。
揮発性有機化合物とはVOCとも呼ばれ、その一部の物質は体調不良の原因となることが分かっていて、最近の建材では使用量が制限されているので、一定の換気が確保されていれば(一応は、、、)問題ないことになっています。
しかし『だから大丈夫』という訳ではありません。
住宅に持ち込まれる家具やカーテンなどのファニチャー類はいまだに野放し状態。
シックハウス問題はいまだ完全には解決していないと思っておいた方が良いでしょう。

もう一つ排出しなければならない有害物質は、意外かもしれませんが二酸化炭素です。
二酸化炭素は調理などでガスなどの化石燃料を使った際や人の呼吸から発生します。
なので、人が生活する以上、換気は絶対にしなくてはならないという事です。
二酸化炭素の濃度が上がると、集中力の低下や疲労感がでると言われています。
ビル衛生管理法という法律では、居室の二酸化炭素濃度は1000ppm以下に規定されています。

最後に排出しなければならないのは、空気感染の恐れのある病原菌などです。
換気がきちんと出来ていない住宅だと、一人が風邪をひいたら一家全員に感染となりかねません。
ちなみに病棟では、1時間に2回空気を入れ替えるだけの換気量を確保することが義務になっていて、これは住宅の4倍にあたります。

このような理由で、健康に生活するためには換気は必ずしなければならないのです。
しかし、みなさん『換気をする』というと『=窓を開ける』とお考えではないでしょうか?
たしかに窓を開けて空気の入れ替えをすることは気持ちいい事ですが、上記のような理由を考えれば常に換気をしている状態でなければならないことが分かります。
そういう事もあり、平成15年以降に建てられた一般的な住宅には24時間連続運転する換気扇の設置が義務付けられています。

計画換気ってなに?

『計画換気』という言葉があります。
簡単に言うと、『空気の入口(吸気)と空気の出口(排気)を明確にしましょう』という事です。

先ほど換気の役割について『新鮮な空気の供給』と記述しましたが、最近の外気は花粉やpm2.5などの物質が飛び交っていて、新鮮とはいい難い状況。
なので、吸気口となる場所には必ずフィルター等で防塵対策をすることが大切です。

また窓を開けるような換気では天候・風向きに左右されがちです。
たとえばトイレや浴室などが風上になってしまうと、換気の目的である湿度や臭いの排出にとっては逆効果。
かといって窓を閉め切ってしまうと有害物質の排出まで止まってしまいます。

なので、前述したように換気扇による機械的(=天候に左右されず計画的)な換気で、入口と出口を明確にして換気をコントロールすることが大切なのです。

気密の役割

さて、ここまで換気が大切である事を確認してきました。
ここからいよいよ本題の気密の話になりますが、結論をいうと、高気密(+高断熱)化は必須だと思っています。
なぜなら、『気密を取ることできちんとした換気ができる』からです。

え?と思われた方いらっしゃいますよね?
『気密』というと『=換気量が減って空気が滞る』というイメージが沸きませんか?
実際はまったくの逆です!
個人的には気密という言葉がもつニュアンスが誤解を招いていると思っています。

気密と換気の関係を、コップに入ったジュースをストローで飲むことに例えてみましょう。
ストローが住宅、ストローの先は吸気口で、元は排気口、ジュースは新鮮な空気です。
さらに、ストローの先には異物を吸い込まないようにフィルターがついているとしましょう。

ジュースの中にストローの先を入れて吸い込むと、元からジュースを飲むことができます。
これが理想的な(計画された)換気の状態です。
吸う強さによって、飲むジュースの量も自由にコントロールできます。

ところが、ストローの途中に穴が空いていたとしましょう。
そうするとストローに空いた穴から溶けた氷で薄まったジュースがストローに入ってきます。
しかもフィルターの付いたストローの先から吸い込んだジュースではないので、オレンジの種などの異物が含まれているかもしれません。

さらに飲み続けると、ジュースの嵩が減ってやがて穴から空気が入りだします。
少しの穴であれば、強く吸ってジュースを少しずつ飲めるかもしれませんが、嵩が減り続けて穴から入る空気が多くなると強く吸っても、ジュースを飲むことはできなくなります。

このストローに空いた穴から入る意図しない流れを、『漏気』と呼びます。
漏気があると、意図した換気ができなることがお分かりいただけると思います。
『換気』と『漏気』はまったく違うもので、共存することはありません。
そして『気密』とは『換気をコントロールするために、意図しない漏気を防ぐ事』なのです。

高気密化のデメリットとは

さて、高気密化に否定的な意見はいくつか出てきます。
これらをひとつひとつ検証してみましょう。

・気密は海外の考え方で日本には馴染まない
 ドイツには建築物理という分野があって、住環境を物理的な側面から技術サポートをしています。
 『昔の偉い誰々が何と言った』などの思い込みや通念ではなく、あくまで理詰めで考えるスタイルです。
 そして、物理に国境はありません。
 ですから『海外だ日本だ』という議論は無意味です。
 住環境の評価するシステムに日本の気象データ等を入れて評価し、悪ければ改善策を考える。
 それだけの話だと思います。

・換気を機械に頼ることに違和感がある
 気候がよければ窓を開放したいというのは自然な考えです。
 そんな時は窓を開ければ良いのです。
 大切なのは換気を機械に頼ることではなく、自由にコントロールできることです。
一方で漏気があっては、隙間風をコントロールできません。
目的はあくまで快適な住環境を作る事であり、そのための手段(機械換気・窓の開放)を選べるようにするためには、気密を上げることが必要になるのです。

・ビニールハウスのようで息苦しさを感じる
 一般的に高気密化をすると、外部からの音が入りづらくなります。
 そこから一種の閉そく感などを感じる方もいらっしゃるようです。
 ただ、必要十分な換気量が確保できているのならば、感覚的なことを除いて健康に害があることはありません。

・シックハウス症候群の原因となる
 高度成長期にアルミサッシが登場し、意図せず住宅の気密性が上がってシックハウス症候群を招いたのは事実です。
 しかし、『意図しない気密化による換気不足』が原因であって、計画換気を正しく行えばVOCの排出は行う事が出来ます。

・冬は乾燥する
 これは気密の有無にかかわらず、冬に乾燥した冷たい空気を暖房器具で暖めることで必ず発生する事象です。
 気密性の高い住宅では室内での火気使用が制限されますので、より水蒸気の出にくい状況であるといえるでしょう。
 しかし、加湿器などを用いることで湿度は上げられますし、気密性の高い家は湿度も逃げにくいので、そういう意味では乾燥しずらいとも言えるでしょう。

・高温多湿の日本では結露が発生する
 結露は『高温』で『多湿』な空気が『冷たいものに触れる』ことで起きます。
 この条件の一つでも揃わなければ、結露は起きません。

 まず『高温』ですが、極論を言えば冷暖房せずに外気と同じ環境であれば結露は発生しません。
 昔の民家など隙間風が吹くような家はこの状態でした。
 しかし健康などを考えれば、この住環境は目指す方向ではありません。

 では『多湿』はどうでしょうか?
 たしかに日本の気候は湿度が高く、乾燥する冬も先に記したように加湿をした方が望ましいです。
 これも健康にかかわる事なので、我慢すべきではありません。

 なので結露を防止するためには、高温多湿な空気を冷たいものに触れさせなければ良いのです。
 冬季に家を暖かく保つ断熱材の中は、外に近づくにつれて温度が下がっていきます。
 下がってきた温度が露点温度に達すると、そこで結露が発生しますのでその部分に高温多湿な空気を入れなければ良いのです。
 では、どのように入れないようにするかというと、それが『気密』なのです。
 室内側に気密シートを貼って、断熱材の中に室内の高温多湿な空気が入らないようにすることで結露を防ぐことができます。

 結論をいいますと気密が取れていない住宅の方が、壁の中などの温度差が生じる部分で結露が生じることになります。

・寒さ対策なので夏は暑い
 気密の高い家(+断熱性の良い家)は、よく魔法瓶に例えられます。
 一度暖めると冷めにくく、一度冷やすと温くなりにくいのです。
 冬季に熱を加えることに関しては、人を含めて住宅にはたくさんの発熱要因がありますので、さほど難しくありません。
 逆に、夏季には冷やす要因がありませんので、最大の発熱要因である日射をきちんとコントロールしないと室温が上昇する可能性があります。
 この点をきちんと配慮した設計にすれば、一度冷えた空気を逃さず過ごしやすい住環境にすることができるでしょう。

まとめ

さて、長々と記述してしまいましたので、最後にまとめましょう。

・換気は快適な住環境をつくるのに不可欠である

・気密なくして計画的な換気は出来ない

・気密性の良い住宅で心地よく過ごすためには、設計や住まい方にも工夫が必要

今回はあえて、私たちが取り組んでいる『省エネ』には触れませんでした。
しかし、『省エネ』以前の問題として換気、そして気密が大切だということはお分かりいただけたのではないでしょうか?

昔のような吹き曝しの住宅であれば気密は必要ありません。
しかし、冷暖房をもつ現代の住宅では必須と言えると思います。

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