耐震基準ってなに?

更新がだいぶ途絶えておりましたが、久しぶりに『低燃費余話』。
ちょっとマニアックな住宅業界のトレンドをお伝えしちゃうコーナーです。

本日のテーマは『地震』

『地震・雷・火事・おやじ』
古来より日本で最も恐れられていた自然災害は地震です。
2016年4月に発生した熊本地震は、私共の業界にも大きな衝撃を与えました。
被災された方には謹んでお見舞い申し上げます。
熊本地震の検証をへて、今後は大きな法改正がされると言われています。
なぜならば、熊本の地震は耐震基準の『想定外』の地震だったからです。
今回は建築業界的に地震対策はどうなっているのかを記述したいと思います。

・耐震基準ってなに?

日本での耐震基準は1924年に施行されました。
実は、地震対策に基準が設けられたのは、世界初なんです!

つくられた理由は1923年に起きた関東大震災。
以降、十勝沖地震を受けて1971年に、濃尾地震を受けて1981年に、阪神淡路大震災を受けて2000年にと、大きな地震が起こるたびに修正がされてきました。
特に1981年に改正されたのちの耐震基準は俗に『新耐震基準』と呼ばれており、これをベースに私共も仕事をさせていただいています。

では、どの程度を基準としているかと言えば『100年に一度の大地震に倒れない程度』とされています。

では、『100年に一度の地震』ってなによ? となりますが、具体的には震度6強~7程度とされています。
もう少し専門的に言えば、『建物が支える荷重と同じ力で横から押されても倒れない』となります。

ここで、皆様に衝撃的な事実をお伝えしなければいけません。
じつは、これと一緒に『50年に1度の地震(震度5強程度)に壊れない程度』というもう一つの基準もあります。
『壊れない』『倒れない』はどう違うの? と思いますよね。
壊れないとは、読んで字のごとく壊れない事ですが、倒れないとは『最低限、生命を守れる程度には壊れる』という事です。

ですから、皆様が今お住まいの住宅も震度7に被災したら壊れます!
なので地震保険に入っておきましょうね。

なぜそうなっているのか? 酷く乱暴な言い方をすれば『日本の木造住宅は30年程度で壊されるので、100年に1度の地震に備えても経済性が悪い。だから命が助かればオーケー』という事です。
国の基準からして、『住宅をストックする』という考え方が欠如していることがよくわかりますね。

・熊本地震は想定外だった?

さて、以上を前提に熊本地震です。
4月14日に前震、その2日後に本震が発生し、いずれも震度7を計測しました。
なんと、100年に一度であるはずの地震が、連続して2回も来てしまったのです!

この事は被害状況からもうかがえます。
前震で大きく損傷してしまっていた家屋が、本震で倒壊してしまうケースが続発。
全壊した家屋は8000棟を超えました。
これらには、新耐震基準を満たしているものが多く含まれています。

一方で前震で壊れてしまった家屋から避難した方々は、避難先で本震に被災されます。
ゆえに甚大な被害を及ぼした災害である割には、死者50名(うち倒壊による死者37名)と人的被害は少なくなりました。

熊本地震より前にはわずか3回しか観測されていなかった震度7。
それが連続して起こってしまった事で、今後は『震度7でも壊れない』ことが基準になるかもしれません。

・地震係数ってなに?

さて、別な面でも改善の必要性が指摘されている事があります。
それは『地震係数』と呼ばれる数値。
簡単に説明すると、『地震の少ない地域では、耐震基準を緩くしても良い』という事です。
日本海側を中心に設定されていて、必要とされる基準に係数を掛けて基準を緩めます。
熊本は地震係数0.9(場所によっては0.8)で、通常の90%の強度で耐震基準を満たせる場所になります。
つまり大きな地震が起きるリスクが少ないと思われていた場所で、大地震が起きてしまったのです。

実は地震係数が現実に即していないという声は以前からありました。
新潟中越地震や日本海中部地震など大きな被害を出した地震が、地震が少ないと言われていた地域で起きています。

今後、『地震係数』も見直されるかもしれません。

・壁量計算ってなに?

木造住宅については、もう一つ指摘されている事があります。
それは『壁量計算』の功罪について。

ここでまた、皆様に衝撃的な事実をお伝えしなくてはなりません。
実は、大多数の木造住宅では『構造計算』は行われていません。

え?本当に? と思われるでしょう。

本当です!

ではどうやって耐震性能を担保しているのでしょうか?
それが『壁量計算』です。
簡単に説明すると、『住宅に掛かる荷重や外壁の面積に応じて必要十分な耐力壁を適切に配置している』ことをチェックします。 いわば超簡易版。
構造計算との大きな違いは、柱や梁に掛かる荷重(力)を計算せず、経験則にゆだねている事になります。

やや専門的になりますが、建物にかかる荷重(力)は全て、柱や梁を通して最終的には地面に伝達されます。
なので、力がかかる壁や柱は1階と2階が重なっていた方が、素直に上から下へ、そして地面へ力が伝えられます。
これを『直下率』言い、重なっている部分が多いほど、直下率は高くなります。
直下率の悪い(小さい)建物では柱や梁がジョイントする部分に使う金物等に強い荷重がかかり、外れてしまうリスクが高くなります。

このようにとても大切な直下率ですが、特に規制はなく設計士の判断にゆだねられています。
ゆえに、間取りやデザインを優先した場合は、直下率が悪くなっている場合があります。

実は、熊本地震において耐震基準の約1.25倍(耐震等級2といいます)という強い強度をもっていた家屋が全壊してしまい、業界に大きな驚き与えました。
全壊してしまった大きな理由の一つが、直下率が悪かったからだと言われています。

ではなぜ『壁量計算』のような簡易的なものがまかり通っているのでしょうか。
それは、木造の構造計算をできる人員が仕事量に対して圧倒的に足りていないからです

しかしこれだけコンピュータが発達したのですから、今後は木造でも構造計算が必須になってくるかもしれません。

 

さて、熊本地震がおこってから住宅業界が抱えている耐震基準の問題点について長々と記述させていただきました。
皆様には結構衝撃的な『ギョーカイのジョーシキ』もあったのではないでしょうか?

これからどのように改正・改善されていくのか、ワタクシ自身も興味を持っております。
これから家を検討されている方は、地震対策についても理論的に説明できるパートナーと家づくりを進めていただければと思います。

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